[民宿内] 倉上ひなた : そうして、アリスの腕を引っ張り、部屋の外へ出た私。

[民宿内] 倉上ひなた : 田舎ということもあり(失礼)、廊下は暖房が完備されておらず……。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……うぉぉ、お、思ってたよりさぶい!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「ふわわああ……だ、だねえ……」

[民宿内] 倉上ひなた : アリスの手を、さらにぎゅっと握り締める。

[民宿内] 倉上ひなた : 手のひらから伝わる、アリスの熱を感じながら。

[民宿内] アリス・カータレット : 高校生が泊まる旅館、ということで。
言うほど良い物でもなく。

[民宿内] 倉上ひなた : 自分よりも少し小さい彼女から伝わる、この熱がより鮮明に感じられて。

[民宿内] 倉上ひなた : ……なんだか、ちょっぴりドキドキした。

[民宿内] 倉上ひなた : 理由は、わかんない。
詳細不明の高揚感。

[民宿内] アリス・カータレット : 隙間風が体が振るわせるが、ひなたのその手、真に伝わるその温かさが。

[民宿内] アリス・カータレット : 「えへへへ……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「あ……へへへ!」

[民宿内] 倉上ひなた : アリスの笑みに、つられて笑う。

[民宿内] アリス・カータレット : ……どこか、心も体も熱を持たせていた。

[民宿内] アリス・カータレット : 「…ちょっぴり心配だったけど、ひなたと一緒なのはなんだか楽しいよ!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「!」

[民宿内] 倉上ひなた : 私と一緒だと、楽しいんだ……。

[民宿内] 倉上ひなた : そっか、へへ、そうなんだ。

[民宿内] アリス・カータレット : にこにこ、また無害そうな顔で笑う。

[民宿内] 倉上ひなた : 少し耳元が赤くなりながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……うん!私も、アリスと一緒だと楽しいよ!」

[民宿内] アリス・カータレット : ……いつも引っ張ってくれて、私を構ってくれる。
日本に来てからこんな人は初めてだったから。

[民宿内] アリス・カータレット : 「………!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「あ、はは……!そう、なんだ……!」

[民宿内] 倉上ひなた : ………あわわわ。
な、なんだか、自分でもこれ、恥ずかしくなってくるというか……。

[民宿内] アリス・カータレット : ぎゅ、と無意識に握る手が強くなる。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……!」

[民宿内] アリス・カータレット : ……ひなたの笑顔が、今度は私に向いてくれた。

[民宿内] 倉上ひなた : 時が、ゆっくりになっているように感じられる。

[民宿内] 倉上ひなた : 廊下を突き抜ける寒風にも、動じず。胸のあたりから広がっていく温かさが、指の先へとどんどん伝わっていく。
とくん、とくん、とくんという心臓の鼓動が、私の耳にもハッキリと聞こえてくるようだ。

[民宿内] アリス・カータレット : ……それだけで、なんだか。
この場所でも、ワンダーランドに感じられる。夢の国みたいな、ふわふわとした心地が感じられる。

[民宿内] アリス・カータレット : ……ただ、楽しくて、嬉しい。

[民宿内] 倉上ひなた : こんな高揚感……生まれて、初めて……かも……。

[民宿内] 倉上ひなた : ……私、趣味で山登りとかするけど……。

[民宿内] 倉上ひなた : 新しい山を見つけては、山頂まで登る楽しさに、いつもいつも夢中になってるけど。

[民宿内] 倉上ひなた : その時の、山を制覇した時の胸の高まりとは、なんだかまた別のように感じられる。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……こんなに楽しいのは、初めてだよ」
ぼそりぼそり、うつむき、呟きながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 「え」

[民宿内] 倉上ひなた : 「あ」

[民宿内] 倉上ひなた : 「う、うん」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……そうだね!私も、超楽しい!」

[民宿内] アリス・カータレット : ふと、発した言葉。
もちろんアリスはひなたの心を意識したわけじゃない、が。

[民宿内] 倉上ひなた : いつもの明るく元気な笑みを作り、アリスへ向ける。

[民宿内] 倉上ひなた : どくん、どくん、どくん、どくん、どくん、どくん。

[民宿内] 倉上ひなた : やばい、何、これ……!?

[民宿内] アリス・カータレット : 「…だよねっ、なんだか……わくわく、する…」

[民宿内] 倉上ひなた : 「………えっと、えっと……あ!見てアリス!」

[民宿内] アリス・カータレット : いつも感じている、ひなたへの得体のしれない、気分の良さ。
でも……今日だけはなんだか特別、二人っきりだからかな。

[民宿内] 倉上ひなた : そう言い、話題を逸らすように、民宿内にある銭湯を指差す。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……う、うん…?」

[民宿内] アリス・カータレット : 首を傾げ、ひなたの向く方へ。

[民宿内] 倉上ひなた : 「こういうところの銭湯って……人いなさそう(失礼)だし……もしかしたら!泳げるんじゃない!?」

[民宿内] 倉上ひなた : にしし!と悪戯な笑みを浮かべながら。

[民宿内] アリス・カータレット : 「あ、銭湯!おっきそうなお風呂、初めて……!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「あ、ダメだよひなた!ちゃんとルールは守らないと!」

[民宿内] アリス・カータレット : ぷんぷん、と頬を膨らませながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 「へへへ~!分かってるって~!ジョークだよジョーク!ジャパニーズジョーク!」

[民宿内] 倉上ひなた : 子どもっぽく笑いながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 「じゃあ、ちょっと早いかもだけど……一番風呂、しちゃおっか!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「も、もぉお~……あ、一番風呂……ふふ、いいかも!」

[民宿内] アリス・カータレット : また揶揄われた……
でも、ふふ、悪くないかも。

[民宿内] アリス・カータレット : 「じゃあ……入っちゃおう!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「いえ~い!それじゃあ……突撃だ~~!!」

[民宿内] 倉上ひなた : そのまま、アリスの腕を引っ張りながら銭湯の中へと駆ける。

[民宿内] アリス・カータレット : 「ふわわわぁ~~!」
そのまま持っていかれる。

[民宿内] アリス・カータレット : な、何回引っ張られるんだ私~!

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた : 更衣室。

[民宿内] 倉上ひなた : 体育の着替えの時みたいに大胆に脱ぐ私。

[民宿内] 倉上ひなた : そんな中、視界に入る、アリスの────。

[民宿内] 倉上ひなた : ………ごくり。

[民宿内] アリス・カータレット : いそいそ、と縮こまりながら着替えている。

[民宿内] 倉上ひなた : ……い、いや、なんだ今の溜飲……!?

[民宿内] アリス・カータレット : …他に人がいない、とはいっても…
更衣室って広いから……恥ずかしい、し……それに……

[民宿内] アリス・カータレット : ちら、とひなたの方を向いて。

[民宿内] 倉上ひなた : まるで私が、アリスの……か、体が、気になっちゃってるみたいじゃん……!?

[民宿内] 倉上ひなた : 私達、同性だし!!そういう目で見るとか、あり得ないし!!

[民宿内] アリス・カータレット : ……あ、もう脱いで……って、すべすべして…

[民宿内] 倉上ひなた : ……なんか今日の私、めっちゃ変。

[民宿内] アリス・カータレット : 「は、はわわわ!?!!?」
ばっ、とそんなことを思って、つい向き直る。

[民宿内] 倉上ひなた : 「っ……!?ど、どうしたの!?」

[民宿内] アリス・カータレット : ………みみみ、みちゃだめだし!
それに服の着替えも、別に気になるわけじゃないよね!

[民宿内] アリス・カータレット : 「えっあ、っ、その……」

[民宿内] アリス・カータレット : …どうしよう~!?!?気になっちゃったなんて言えないよう!

[民宿内] アリス・カータレット : 「……む、むしがいた……!」

[民宿内] アリス・カータレット : 汗だらだら。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……あ、む、虫!それは、大変だ!!早いところ逃げないとね!いや~田舎だし、やっぱそういうのもあるんだね~!(失礼)」

[民宿内] 倉上ひなた : 若干早口ながら、アリスの体は極力視界に入れず。

[民宿内] 倉上ひなた : 「と、というわけで!お先に~!」

[民宿内] 倉上ひなた : そそくさと、バスタオルで体の前を隠しながら、浴室へ────。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……あ…」

[民宿内] アリス・カータレット : 「ま、待ってよう……!ひなた…!」

[民宿内] アリス・カータレット : ……引っ張られるのはそそっかしいけど、置いていかれるのは…なんだか……

[民宿内] アリス・カータレット : もやもやした気分を払うように、同じようにタオルで身を隠し。

[民宿内] アリス・カータレット : とてとて。

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた : なんとビックリ。

[民宿内] 倉上ひなた : この宿屋は、露天風呂付きだったのだ。源泉より湧き出るお湯で体を芯から温めながら、広がる雪景色を一望できる、そんな場所だ。

[民宿内] 倉上ひなた : 「ぶぇっくしょん!」

[民宿内] 倉上ひなた : とは言え

[民宿内] 倉上ひなた : 湯船に浸かるまでは、超寒い。

[民宿内] 倉上ひなた : 気温は、0℃近い。当たり前ながら、超寒い。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……へくちっ!」
同じように、寒さでくしゃみを起こしていて。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……う、うう…早くはいろっ!お風呂で風邪ひいちゃうよ!」

[民宿内] 倉上ひなた : ……あ、可愛いくしゃみ。

[民宿内] 倉上ひなた : なんて呑気なこと考えながら。

[民宿内] アリス・カータレット : ぷるぷるぷる、小刻みに震えながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 「そ、そうだね!!わわわわ、ガクガクガク……ア、アリス~!おしくらまんじゅう~!」

[民宿内] 倉上ひなた : ぴとりと、肩を合わせながら、いそいそと湯船へ、小走り。

[民宿内] アリス・カータレット : 「ひゃっ!?」

[民宿内] アリス・カータレット : ぴとり、と触れ合ったその熱で。
一気に体の寒気が吹き飛びながら。

[民宿内] アリス・カータレット : ちゃぷん。

[民宿内] アリス・カータレット : 足を、そろそろと湯舟へと漬からせる。

[民宿内] 倉上ひなた : 凍える寒さから一変。

[民宿内] 倉上ひなた : 溜まった疲れが抜け落ちていくような感覚。

[民宿内] アリス・カータレット : 「は、はふぅうう~………ごくらくごくらく…」

[民宿内] アリス・カータレット : 長旅の疲れ、寒気と言ったものが湯に溶け行っていく。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……ふぃぃ~~~、あ、ぷぷ!何それアリス!おっさんみたい~!」
子どもっぽく笑いながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 「ていうか、極楽とか、そういう知ってるの、やっぱすごいねアリス~!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「え、なにそれ~!日本じゃこういう時に極楽~!とか言うんじゃないのぉ!?」
漫画で読んだその知識を思い出しながら。

[民宿内] アリス・カータレット : 「え、えへへへ~!いっぱい勉強したもん!ここに来るときにね!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「華の女子高生は言わないよ~!あははは~!!」
楽しそうに笑いながら。

[民宿内] 倉上ひなた : ちゃぷん、と寒空に晒した肩にお湯をかけながら。

[民宿内] 倉上ひなた : やっぱり視線は……。

[民宿内] 倉上ひなた : ………真っ白な肌だなぁ。

[民宿内] 倉上ひなた : と、アリスの肩の方にも……。

[民宿内] アリス・カータレット : 「そうなんだぁ……むつかしい……」
ぶくぶく、と顔を湯舟へと落ちていきながら。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……?どーしたの?」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……ふぇっ!?な、ななな、なんでもないよぉ!?」

[民宿内] アリス・カータレット : どこか視線が当てられたように感じ、ひなたの方へ。

[民宿内] アリス・カータレット : 「? そういうものかなあ…」

[民宿内] アリス・カータレット : 言いながら、雪降る空を見上げる。

[民宿内] 倉上ひなた : ……あ、あっぶな~~~……!!

[民宿内] 倉上ひなた : アリスの体をジロジロ見てたとかバレたら、私ヘンタイって思われちゃうじゃん……!

[民宿内] 倉上ひなた : 「……ん」

[民宿内] アリス・カータレット : んん~~~、と言いながら手足を伸ばしつつ。

[民宿内] 倉上ひなた : アリスの視線の先の方へ、ひなたも見て。

[民宿内] アリス・カータレット : 「…こんなとこに来れたのも、ひなたが友だちだったお陰だよ~」

[民宿内] アリス・カータレット : なんて、遥かはるか遠くの、母国を空に描きながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……んへへ、そう?」
照れながら。

[民宿内] アリス・カータレット : 「こんな留学生の私にも親しくしてくれたんだもんね」

[民宿内] 倉上ひなた : 真っ白な空から、しんしんと降り落ちる雪の結晶を眺めながら。

[民宿内] アリス・カータレット : ……私が日本に来た理由は、興味から。
逆に言えば、確固たる目的もないまま来たわけで、来た当初は不安でいっぱいだった。

[民宿内] 倉上ひなた : 「んーーー……まぁ、ね~」

[民宿内] 倉上ひなた : 出会いは、何てことないものだった。

[民宿内] 倉上ひなた : ミーハーな私は、誰よりも先に英国少女に話を掛けた。

[民宿内] アリス・カータレット : 「あの時はちょっと他の人が怖くって……だから、すっごく嬉しかったなぁ」
なんて。

[民宿内] 倉上ひなた : 他では経験できないことを経験できそうだから。
外国の子とお話できるなんて、滅多にない機会だから。

[民宿内] 倉上ひなた : だから、真っ先に友達宣言をした。

[民宿内] 倉上ひなた : 「あ、あははは~……」

[民宿内] 倉上ひなた : あんまり褒められた迫り方じゃないけどね。

[民宿内] アリス・カータレット : 知らない物が怖い、なんてよくあることだ。
それを知るために日本に来たのに、矛盾していることだけど。

[民宿内] 倉上ひなた : 「ちょっとグイグイ行き過ぎたかなって私、思ってたけど……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……そう思ってくれてるのなら、良かった」

[民宿内] アリス・カータレット : 「ううん、そんなことないよ!」

[民宿内] 倉上ひなた : ぐいぃ、と腕を天へ伸ばし。

[民宿内] アリス・カータレット : ぐい、とひなたの方へと近づいて。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……!」

[民宿内] 倉上ひなた : ドキン、と心臓が跳ねる。

[民宿内] アリス・カータレット : 「ひなたがこうして話してくれたおかげで…みんなともお友達に慣れたんだから……」
巻き毛、和音センパイ、きりたんとも。

[民宿内] アリス・カータレット : 「すっごく感謝してるし、それに……」

[民宿内] 倉上ひなた : ち、近……アリスが……!裸のアリスが、すぐ目の前に……!

[民宿内] 倉上ひなた : 「………」

[民宿内] アリス・カータレット : ……ずっと、ひなたのことが……気になってた。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……あ、えっと…」

[民宿内] アリス・カータレット : 「…毎日がわびさび文化!!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「………ほへ?」

[民宿内] アリス・カータレット : 咄嗟に変なことを口走って、慌てふためく。

[民宿内] 倉上ひなた : 「………ぷっ!」

[民宿内] 倉上ひなた : 思わず吹き出し。

[民宿内] アリス・カータレット : あ、そうじゃなくて……でも!こんな事……!!

[民宿内] 倉上ひなた : 「あは、あははははは~~~~!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「え、ぇえええ~~!?」

[民宿内] 倉上ひなた : 「あ~~おっかし!……うんうん、そうだね!……私も!毎日がわさび文化だよ!」

[民宿内] アリス・カータレット : がぁぁん、と顔がゆがむ。

[民宿内] アリス・カータレット : 「も、もぉお~~!からかわないでってばぁ!」
こつんこつん、と。
真っ赤にした顔で軽くたたいている。

[民宿内] 倉上ひなた : 「あいたたた~!あはは!ごめんってば~!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……でも、うん」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……私も、アリスと友達になれて、すっごく良かった」

[民宿内] 倉上ひなた : ……こんな気持ちになれたのって、生まれて初めてだし。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……ほえ…」

[民宿内] 倉上ひなた : 「親友ってさ、中々できないものだからね」

[民宿内] アリス・カータレット : とんとん、と叩いていた拳が止まり。

[民宿内] 倉上ひなた : ニコ、と笑い。

[民宿内] 倉上ひなた : ……うん、多分この関係は、親友、と言って差し支えないもの、だよね。

[民宿内] アリス・カータレット : 「親友………えへへ、えへへへへ……!」

[民宿内] 倉上ひなた : この胸の高鳴りも………。

[民宿内] 倉上ひなた : ……しん、ゆう……だから……?

[民宿内] アリス・カータレット : 顔に手を添え、ぽわぁー…とどこかを見ている。

[民宿内] 倉上ひなた : ………そこは、ちょっと、わかんないや……。

[民宿内] アリス・カータレット : …親友、ベストフレンド、1番の友達…!
……ひなたの、1番、1番…!

[民宿内] アリス・カータレット : 「ううぅ〜……私も、親友!」

[民宿内] 倉上ひなた : なんてこと思いながらも、アリスの無邪気な笑みを見て、つられて笑い。

[民宿内] 倉上ひなた : 「にしし!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……これからも、よろしくね!」

[民宿内] アリス・カータレット : 嬉しくなって、笑顔が零れながらも笑い。

[民宿内] アリス・カータレット : 「…うんっ!これからも…一緒だよ、ひなた!」

[民宿内] アリス・カータレット : そうして……手を、握る。

[民宿内] 倉上ひなた : ………!!

[民宿内] 倉上ひなた : ドキン。

[民宿内] 倉上ひなた : 「あ、あぅ、うん……!」

[民宿内] アリス・カータレット : 他に誰もいないという高揚感か、何れか。
それは私を大きく動かして……

[民宿内] 倉上ひなた : 「ずっと……ずっと一緒だよ!お婆ちゃんになっても、ずっとベストフレンド!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「……おばあちゃんなんて……あ」

[民宿内] 倉上ひなた : ………あ、あぇ。

[民宿内] 倉上ひなた : 今の、なんだか、告白みたい……?

[民宿内] アリス・カータレット : さぷん、と握った手が湯船から出ながらも。

[民宿内] アリス・カータレット : …………。

[民宿内] アリス・カータレット : おばあちゃん……かぁ。

[民宿内] アリス・カータレット : ……それまで…いられるのかな…

[民宿内] 倉上ひなた : ……って、何考えてるの私ー!
そんなわけないでしょーが!

[民宿内] 倉上ひなた : 「………?」

[民宿内] アリス・カータレット : 「…う、うん!その時まで一緒…だよ!」

[民宿内] 倉上ひなた : と思いながら、アリスの顔を見て。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……絶対、だよ?」

[民宿内] 倉上ひなた : 曖昧な表情を見せたアリスに不安を覚え、確かめるように、そんなことを呟いてしまった。

[民宿内] アリス・カータレット : 「あ……う、うん……」

[民宿内] アリス・カータレット : その言葉には、確かに肯定をした、けれど。

[民宿内] アリス・カータレット : 目線はどこか上の空。

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] アリス・カータレット : …温泉を満喫した私たち。

[民宿内] アリス・カータレット : さて、帰ろうと二人で別の道を辿ろうとすると。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……あ、これ見て!ゆったりできそう~!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「ん~?」

[民宿内] アリス・カータレット : そこには一室。
客であるなら誰でも利用できるソファーと、そして雪が流れる外を見れる窓が置かれた、質素なロフト。

[民宿内] アリス・カータレット : 「お風呂にも入ったし、ちょっとゆっくりしない?」

[民宿内] 倉上ひなた : 「おぉぉ~~~!!いいね!雰囲気あるある!!」
特に何もない、だからこそゆったりとした雰囲気が感じられ。

[民宿内] 倉上ひなた : 「賛成~!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「やった~!」
コーヒー牛乳片手に、ぽふんとソファーへと座る。

[民宿内] 倉上ひなた : 「わったしも~!」
温泉上がりはやはりコーヒー牛乳!同じものを買い、アリスの隣へ座る。

[民宿内] アリス・カータレット : 窓を見れば、流れる雪吹、ゆったりとした流れがそこに会った。

[民宿内] アリス・カータレット : 「わっ………えへへへ……」

[民宿内] アリス・カータレット : …隣に座るひなたに、どこかたどたどしく返事して。

[民宿内] 倉上ひなた : 「んへへへへへ~~!!」
アリスを見て、無邪気に笑い。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……それにしても、いい景色だね~」
キュポン、とコーヒー牛乳の蓋を開け。

[民宿内] 倉上ひなた : ごきゅ、ごきゅと飲みながら。

[民宿内] アリス・カータレット : 「…………あ、そだね…!」
振られた話題に、慌てて返して。

[民宿内] アリス・カータレット : ………全然忘れてたけど……もうすぐ…

[民宿内] 倉上ひなた : 「………」

[民宿内] アリス・カータレット : つるつる、さすさす。

[民宿内] アリス・カータレット : 蓋を開けようと、何度も手を伸ばすが。
その度に苦戦していて。

[民宿内] 倉上ひなた : 窓の外を、ぼーっと眺めるひなた。
ゆっくりと落ちて行く雪を見つめながら、思考も徐々に低下。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……ん」

[民宿内] 倉上ひなた : ふと、アリスの方を見て。

[民宿内] 倉上ひなた : 「! あ、大丈夫!?私が開けようか!?」

[民宿内] アリス・カータレット : 「あ、あうう……」
普段なら、出来るのにな……

[民宿内] アリス・カータレット : 「あ……お願い…!!」

[民宿内] アリス・カータレット : その瓶を、ひなたへと。

[民宿内] 倉上ひなた : 「うん!いいよ!」
ニカ、と笑い、アリスから瓶を受け取り。

[民宿内] アリス・カータレット : ……ほわあ、いつもひなたは……優しいなぁ…

[民宿内] 倉上ひなた : ……やっぱり背が小っちゃいし、力も無くて、うーん、そんなところも、お人形さんみたいんで……可愛いなぁ。

[民宿内] 倉上ひなた : なーんて考えながら。

[民宿内] 倉上ひなた : きゅぽん!と軽快な音と共に、コーヒー牛乳の蓋を開ける。

[民宿内] 倉上ひなた : 「はい、どーぞ!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「わあ……おいしそう……!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 冷えた瓶を手に取り、両手で支え。
一生懸命こくこくと飲んで。

[民宿内] アリス・カータレット : 「こくこく……ぷひゃぁ~……」

[民宿内] 倉上ひなた : へへへ、やっぱりアリスは可愛いなぁ。

[民宿内] 倉上ひなた : 小動物的可愛さっていうのかな!
見ていて、ずっと飽きないっていうか~!

[民宿内] 倉上ひなた : ……んん~~~。いや、うーん。

[民宿内] アリス・カータレット : そして、まだ残りある茶色をぼおっと、ただ見て。

[民宿内] アリス・カータレット : …………。

[民宿内] 倉上ひなた : テレビでやってる動物特集を見た時に感じる"可愛い"とは……やっぱり、どこか違うような気がするんだよなぁ……。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……?どうしたのアリス?」

[民宿内] アリス・カータレット : ……隠してても、しょうが、ない、よね。

[民宿内] アリス・カータレット : 「………ん、あっと……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「……あのね、実は……」

[民宿内] 倉上ひなた : ………なんだろう……?

[民宿内] アリス・カータレット : きゅっと、瓶を持つ力が強まる。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……うん」

[民宿内] アリス・カータレット : 「……もうすぐ日本に来て1年経つ、けど……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「4月になったら…」

[民宿内] アリス・カータレット : 「お別れしないといけないんだ…」

[民宿内] 倉上ひなた : 「────────」

[民宿内] 倉上ひなた : 「は?」

[民宿内] アリス・カータレット : ぼそりぼそり、喋るうちに声が小さくなっていく。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……元々1年、って決まってて」

[民宿内] 倉上ひなた : え?

[民宿内] 倉上ひなた : 何、それ?

[民宿内] 倉上ひなた : 聞いて、ない、っていうか……。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「……言い出せ、なかったの……ずっと、ずっと…」

[民宿内] アリス・カータレット : ……先延ばしにしても変わりなかったのに。

[民宿内] 倉上ひなた : ムカムカと、胸の奥から込み上げ来る、原因不明の怒り。

[民宿内] アリス・カータレット : でも、言って、寂しさを味わうようなことにはなりたくなかった。
だから、ずっとずっと先に。
送っていたかった。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……い、いや……だって、アリス……私、さっき、お婆ちゃんになっても、ずっと一緒って……」

[民宿内] 倉上ひなた : 弱々しく、声を震わせながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 踏ん切りがつかない。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……私は、そうしたい、けど……」

[民宿内] アリス・カータレット : ぎゅうう、と瓶の持つ力が、強まって。

[民宿内] 倉上ひなた : 小学校、中学校、高校と進んで、私は色んな友達との別れを経験してきた。

[民宿内] アリス・カータレット : ………だから、こそ、なのかも、しれない。

[民宿内] 倉上ひなた : だから、別に、こんなこと、本来は大したことじゃないはずなんだ。
『また会おうね』で済ませられるはずなんだ。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……………」

[民宿内] 倉上ひなた : 拳を、ぎゅっと握り締める。

[民宿内] 倉上ひなた : 「………だ…」

[民宿内] 倉上ひなた : ぽつりと、呟く。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……え…?」

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた : 「そんなの、やだ!!!!!!!!」

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた : 静寂に、包まれた。

[民宿内] アリス・カータレット : 「────────」

[民宿内] 倉上ひなた : かちり、かちりと、部屋に設置された時計の音だけがする。

[民宿内] アリス・カータレット : 声が、出なかった。

[民宿内] 倉上ひなた : アリスに大声を上げてしまったのは、これが初めてだ。

[民宿内] アリス・カータレット : どきん、と。

[民宿内] 倉上ひなた : そんなことも気にせずに、ひなたは、肩を震わせ、目をぎゅっと閉じ、俯いていた。

[民宿内] アリス・カータレット : ひなたの直情的なその気持ちを突き付けられて。

[民宿内] アリス・カータレット : 目の前が、ぱあっと光り輝いた、気がした。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……なんでだよ……そんなの、ないだろ……私達、親友で……だから、だから……お別れなんて……そんな……!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「……ひなた……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「私……絶対……ぜぇーーーったい……!!やだから……!!!」

[民宿内] 倉上ひなた : 高校生になったというのに、子どもみたいに駄々をこねる。

[民宿内] アリス・カータレット : どきどきどきどき。
何度も触れた、その手に。
体に心が反応したことあれど。

[民宿内] アリス・カータレット : …心と心が触れ合ったことは、初めてだった。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……っ」

[民宿内] アリス・カータレット : だから、だから。

[民宿内] アリス・カータレット : この、心を。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……私だって……いやだ!!!」

[民宿内] アリス・カータレット : ぶつけたい……

[民宿内] アリス・カータレット : 「だって、だって……」

[民宿内] アリス・カータレット :  

[民宿内] アリス・カータレット : 「ひなたのこと、大好きだもん…!!!」

[民宿内] アリス・カータレット :  

[民宿内] 倉上ひなた : ────────え。

[民宿内] アリス・カータレット : 思わず、立ち上がって。

[民宿内] 倉上ひなた : 『好き』。

[民宿内] 倉上ひなた : ありふれたそんな言葉に、私は、頭をガーンと殴られたような衝撃を受けた。

[民宿内] アリス・カータレット : その、本音を、包み隠さず。

[民宿内] 倉上ひなた : 立ち上がったアリスを、ただ茫然を見つめるひなた。

[民宿内] 倉上ひなた : 血流が速まる、速まる、速まる。

[民宿内] アリス・カータレット : まるで夢みたいに、一瞬一秒がふわりと。

[民宿内] アリス・カータレット : 「…友達として、だけじゃなくて」

[民宿内] 倉上ひなた : 高い山に登った時のような……。

[民宿内] 倉上ひなた : 頭が、ぼーっとしてくるような、体中が熱くなってくるような……。

[民宿内] アリス・カータレット : 「もっと、もっと……親友でも足りなくて」

[民宿内] アリス・カータレット : 「……ひなたの、一番に、なりたいの!!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……え……親友、で、も……?」

[民宿内] 倉上ひなた : ごくり、と唾を飲みこむ。

[民宿内] 倉上ひなた : 一番……。

[民宿内] 倉上ひなた : ああ、ああぁぁ……。

[民宿内] 倉上ひなた : そんなの

[民宿内] 倉上ひなた : そんなの……!!

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた : 「────────私もだよ!!!!」

[民宿内] 倉上ひなた :  

[民宿内] 倉上ひなた : 私は、アリスに抱き着いていた。

[民宿内] アリス・カータレット : そう、目を瞑って、大声で叫────。

[民宿内] アリス・カータレット : 「………あ、え」

[民宿内] 倉上ひなた : 力強く、もう失ってしまうものを、絶対に離すまいとするように。

[民宿内] アリス・カータレット : かちかちと鳴る、時計の音すら。

[民宿内] アリス・カータレット : 今はもう、なにも。

[民宿内] 倉上ひなた : 全身の筋肉を駆動させ、アリスという少女の存在全てを、この腕の中に閉じ込めてしまうように。

[民宿内] アリス・カータレット : ……その触れ合いは、今までで、私にとって。

[民宿内] アリス・カータレット : 一番。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……ひっぐ、ぐすっ……!!」

[民宿内] アリス・カータレット : あ、ぁあああ……わ、ああ……。

[民宿内] 倉上ひなた : 私は、泣いていた。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……ひ、なた……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「う゛わあぁぁあああああん!!!ア゛リスぅぅぅぅ……!!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 抱き締められたその体に、しがみつくように、ぎゅっと。

[民宿内] 倉上ひなた : 「わたし……私っ……!!!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「アリスと!!離れたくないよぅ!!!!!」

[民宿内] アリス・カータレット : ぎゅうっと。
小さい体なのに、ずっと。

[民宿内] アリス・カータレット : 「ぅ、ううぅ……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「わ、っ…たひも…だ、よう……!!!」

[民宿内] アリス・カータレット : ぎゅうう、と。

[民宿内] 倉上ひなた : 「だっで、だっでぇ!!!これからもずっと一緒に、いだくてっ……!!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 掴んで離さない。
………離れたら、もうずっと別れたままになりそうだから。

[民宿内] 倉上ひなた : 「いっしょにっ、海とか……行ったり……!!山も……川も……この日本中、全部巡って……!!思い出を、溢れる程作りかったのにっ……!!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「いっ、しょに……いろんなこと、して、たのしみたい、のに…」
嗚咽する声を、必死に抑えながら。

[民宿内] 倉上ひなた : 嗚咽が止まらない。
胸の奥底に閉じ込めていた想いも、それを止めていた壁が決壊して、溢れて止まらない。

[民宿内] アリス・カータレット : 「………ひな、たぁ……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……ア、リスぅ……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「…でも…あんまり、泣かないで……」

[民宿内] 倉上ひなた : 私は、アリスと向き合っていた。
その綺麗な青色の瞳を、じっと見つめていた。

[民宿内] アリス・カータレット : にこ、っと笑って。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……!」

[民宿内] アリス・カータレット : その笑みは、一番近くで見せて。

[民宿内] アリス・カータレット : 「…確かに、帰っちゃうし、しばらくは会えないかも…だけど」

[民宿内] アリス・カータレット : ひなたの背中を優しくなで、子守歌でも聞かせるように、穏やかな声で。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……うん………うん……ぐずっ……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「…でも、絶対に、また…日本に来るから……」

[民宿内] 倉上ひなた : 肩を震わせながら、頷き、頷き。

[民宿内] アリス・カータレット : とん、とん、とん。

[民宿内] 倉上ひなた : 「………や゛くそく……だよ……!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 優しく、慰めるように。

[民宿内] アリス・カータレット : 「………うん、うん……」

[民宿内] アリス・カータレット : じわり、と。
笑っていた顔に涙が出ながら、

[民宿内] アリス・カータレット : 「やく、そく……、ぜったい…!」

[民宿内] アリス・カータレット : それでもまだ、えへへへへと。
いつものように笑っていた。

[民宿内] 倉上ひなた : ………あぁぁ……アリスは……こんな時にでも、優しい……。

[民宿内] 倉上ひなた : こんな、我儘な私に対しても……泣いてくれる……。

[民宿内] 倉上ひなた : もう、こんな、宝石みたいに綺麗な子……二度と会えないかもしれない……。

[民宿内] 倉上ひなた : ……戻ってくる日がいつになるかも、分かんない……。

[民宿内] 倉上ひなた : どうしても悪い方へ考えちゃう、私の悪い癖……。

[民宿内] 倉上ひなた : だから、だから、私は、せめて……せめて、アリスと……。

[民宿内] 倉上ひなた : ────最後の思い出を……作りたい。

[民宿内] 倉上ひなた : 「………ね、ねぇ…ぐすっ……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……アリス……私、ね……あの、ね……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「…なぁに、ひなた……」

[民宿内] 倉上ひなた : もう、全部曝け出した、私の涙。
このまま、私が思ってること全て、アリスに……。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……私もね……私も……『好き』なの……アリスのこと……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「………っ、ぁ…」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……友達とか、家族とかに対する、好きとかじゃないの……これ……」

[民宿内] アリス・カータレット : ……それは、それは……もしか、して。

[民宿内] 倉上ひなた : 嗚咽ながらも、言葉を紡ぐ。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……た、多分……あのね……私………」

[民宿内] アリス・カータレット : ………私と、同じ。

[民宿内] 倉上ひなた : 目をぎゅっと閉じ……。

[民宿内] 倉上ひなた : 深呼吸。

[民宿内] 倉上ひなた : ……そして、目を開け。

[民宿内] 倉上ひなた : 目の前にいる、宝石みたいな少女を、じっと見て。

[民宿内] 倉上ひなた : 「────────愛しちゃってるの!!!アリスのこと!!!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「~~~~~~~っ、ぁ」

[民宿内] アリス・カータレット : ぱちぱちぱち、と瞼が開き閉め。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……わぁああああぁ~~~………」

[民宿内] 倉上ひなた : ………あは、あはは……言っちゃった。

[民宿内] 倉上ひなた : もう、どうにも、なっちゃえ。

[民宿内] アリス・カータレット : ぱたん、とひなたへと重力がかかる。

[民宿内] 倉上ひなた : だってさ、だって、これ……私の……"マジ"なんだもん……!

[民宿内] 倉上ひなた : 「………!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「………わた、しもっ!!私も!!私もなの!!」

[民宿内] 倉上ひなた : 「ふぇ……」

[民宿内] アリス・カータレット : わんわんと、ただ、ただ。

[民宿内] 倉上ひなた : 「アリス、も……?……私の、こと、を……?」

[民宿内] アリス・カータレット : 「一番好きで、一番愛してる!!」

[民宿内] 倉上ひなた : 信じられない、といった顔で。

[民宿内] アリス・カータレット : 耳元で叫ぶ、私がひなたに伝えられるように

[民宿内] 倉上ひなた : 「だって、だって私……がさつで……空気読めなくて……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……すぐ頭に血が登っちゃうような……そんな奴、なんだよ……?」

[民宿内] アリス・カータレット : 「……そんなの、全部……ひなたの、いい所だよっ…!!」

[民宿内] アリス・カータレット : 「自分を通せて、私なんかを構ってくれる…あなたが、一番っ…!!」

[民宿内] アリス・カータレット : ぐじ、と目を潤ませながら。
いつにもなく真剣な顔で、そう声を震わせる。

[民宿内] 倉上ひなた : アリスの言葉が、胸に染み渡る。

[民宿内] 倉上ひなた : 嬉しい。

[民宿内] 倉上ひなた : もう、ただひたすら、嬉しくて仕方なかった。

[民宿内] アリス・カータレット : 「────っ、ひなた!!」

[民宿内] アリス・カータレット : そう、叫んだあと。

[民宿内] 倉上ひなた : 「っ……!」

[民宿内] アリス・カータレット : おもむろに。 

[民宿内] アリス・カータレット :  

[民宿内] アリス・カータレット : 唇を、奪った。

[民宿内] アリス・カータレット :  

[民宿内] 倉上ひなた : 「────────んむぅっ!?」

[民宿内] 倉上ひなた : 唇に感じる、柔らかな感触。

[民宿内] 倉上ひなた : 目がちかちかする。

[民宿内] アリス・カータレット : 直で伝わる、ひなたの熱。

[民宿内] アリス・カータレット : これまで以上に、ずっとずっと苦しくて、でも、一番暖かい。

[民宿内] アリス・カータレット : 「ん、ちゅ、ぅ…」

[民宿内] 倉上ひなた : 「んむ……ちゅ……んちゅっ……」

[民宿内] 倉上ひなた : 頭が、蕩けていくようだった。

[民宿内] 倉上ひなた : 不思議の国へ迷い込んでしまったみたいだ。

[民宿内] 倉上ひなた : ここが現実じゃないみたいに思えてくる。

[民宿内] 倉上ひなた : 幸せで、溢れている。

[民宿内] アリス・カータレット : 息が詰まる、苦しくなる。

[民宿内] アリス・カータレット : まるで山に登る気分。

[民宿内] アリス・カータレット : けれど、達成感も嬉しさも、何もかもが、今ここにある。

[民宿内] アリス・カータレット : 「………ん、ぷ、ふぁっ」

[民宿内] 倉上ひなた : 「ぷ、は……はぁ……はぁっ……」

[民宿内] アリス・カータレット : 「……えへへへ、えへへ……」

[民宿内] アリス・カータレット : した後、張本人だというのに。

[民宿内] アリス・カータレット : 顔が真っ赤に、照れ照れ。

[民宿内] 倉上ひなた : 「ぁ……えへ、へへへへ……」

[民宿内] 倉上ひなた : つられて、笑ってしまう。情けないくらいに、だらしない表情で。

[民宿内] 倉上ひなた : ……あうぅ、は、恥ずかしい……。

[民宿内] 倉上ひなた : ………でも、嬉しい。

[民宿内] 倉上ひなた : 「……しちゃったね」

[民宿内] 倉上ひなた : 照れくさそうに。

[民宿内] アリス・カータレット : 「………しちゃ、った……」

[民宿内] アリス・カータレット : ……ああ、すっごく、すっごく……なにこれ、なにこれぇ…!!

[民宿内] アリス・カータレット : ぽわぽわとした夢心地の中、しっかりとひなたに向けて。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……私たち、すっごいよ……」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……うん……すっごい、ね……!」

[民宿内] 倉上ひなた : アリスの瞳を見つめながら。

[民宿内] 倉上ひなた : この高揚は、これじゃあ、終わんない。

[民宿内] 倉上ひなた : もっと、欲しい。

[民宿内] 倉上ひなた : 思い出を、重ねたい。

[民宿内] 倉上ひなた : アリスと、繋がりたい。

[民宿内] 倉上ひなた : アリスを抱き締めた腕が、少し強くなり。

[民宿内] 倉上ひなた : 「………アリス」

[民宿内] アリス・カータレット : 「………あ、うん…」

[民宿内] 倉上ひなた : 「……もう1回……いい……かな……?」

[民宿内] アリス・カータレット : 強まる腕が、嬉しい。

[民宿内] アリス・カータレット : 「………ふふ」

[民宿内] 倉上ひなた : 遠い国へ帰ってしまうなら……もう、それなら……。

[民宿内] 倉上ひなた : 今ここで、飽きるくらい、アリスを接種してやる……!!

[民宿内] アリス・カータレット : 答えを言うまでもなかった。

[民宿内] アリス・カータレット : 一度離れた熱が、絡み合う。

[民宿内] アリス・カータレット : 「……ん、ちゅう」

[民宿内] 倉上ひなた : 「────ちゅっ」

[民宿内] 倉上ひなた : 窓の外でしんしんと雪が降る。

[民宿内] 倉上ひなた : 零点に近い気温。寒さが広がる真っ白な景色。

[民宿内] 倉上ひなた : そんな世界に、2人の少女の間で熱が生まれていた。

[民宿内] 倉上ひなた :
    アイ
お互いの火で暖まり合うように。

[民宿内] アリス・カータレット :  

[民宿内] アリス・カータレット : こうして、私たちの物語は、ひとまず。

[民宿内] アリス・カータレット : 不思議の国の、とあるひなたで。

[民宿内] アリス・カータレット : 二人のお姫様は、幸せに暮らしましたとさ。

[民宿内] アリス・カータレット : ……なんて、思ってみたり。

[民宿内] アリス・カータレット : ちゃんちゃん。 

[民宿内] アリス・カータレット :